レインドロップ

「…っ…!」

夢を見ていた。

たしかこれは、祐が亡くなる2週間前の。

俺がいちばん後悔してることの夢……

「はっ…。今日はとことん嫌な日だな…」

思わず笑えてくる。

忘れていた。
いや、忘れようとしていた記憶。

訂正なんて出来ない、消し去ることなんて出来ない、あのとき祐についた‘嘘’──…

『千里のこと、好き?』


『……別に』


このときの俺には意地が邪魔して、気づいたら本心と逆のことを言っていた。



千里が、好きだ



こう言えていたら、よかった。

悔やんでも、言い直す相手は、もういない。
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