月の女神



…どうしたの?


首を傾げれば、彼女がゆっくりと息を吸い込んだ。


「そうだとしたら、飼ってくれる…?」


少し、震えた声で。


不安そうで、僕の返答を窺うように向けられた視線。


僕にはそれが、「助けて」って意味のように聞こえた。

乗ってくれた。そんな嬉しさもあったけれど、これが今の彼女なんだと。


ずっと、こうやって不安に思っていたのだろうか。一人で震えていたのだろうか。こんな、他人の僕に頼りたくなるくらいに。




包帯を巻きつつ、彼女を見る。笑顔で。


「――僕で良ければ」

僕なんかで良ければ。


「ちゃんと面倒見てあげる。守ってあげるよ」


僕ができることならできるだけ、精一杯。

守ってあげる。君が、少しでも安心できるように。


また、笑顔になれるように。僕が助けられたように、今度は僕が君を。



「あの時ありがとう」とはまだ言えないけれど

いつか言える日がくるといいな。





僕の言葉を聞いて、彼女は驚いたように目を見開く。
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