月の女神
その瞳には、少しだけ涙がたまっていて。
僕は見ないふりをして包帯を巻いた。
「……他にケガはないですか?」
どんな風に誰とぶつかったのかは聞かないけれど、大丈夫かな。
聞けば彼女は自分の体へと視線を這わせて確認する。
コクンと頷いたのを確認して、安心する。
「そう、良かった」
――あ、そうだ。
「お腹は空いていませんか?」
冷蔵庫へと移動する。
「あ、っと。ミルクがいいですかね?」
確認しておいた牛乳を取り出し、座っている彼女に見えるように見せる。
牛乳を見て、頷く彼女。
「待っててくださいね。今までで一番おいしいの作りますね」
気分が落ち着くように、ホットミルクでいいかな。甘いの好きかな…はちみつを多めにいれておこう。