月の女神


「……」


ホットミルクと自分用のコーヒーを作って彼女の元へと行けば。


本棚に置いてある僕の歴史の本をペラペラと捲っていた。あの時のまま、少しでも歴史に興味を持ってくれているのかな?


「……日本史の教師をしているんです」

後ろから声をかけると、彼女がゆっくりと振り返る。


「日本の歴史を学校…高校だけど教えているんです」


コップを置いてから、本棚に近づく。


ここら辺なら、いいかな。


「ここの本はどれも分かりやすくて絵も多いし分かりやすいと思うよ。興味があるなら読んでみて…って文字読めます?」


危ない危ない。



ここに彼女が居座ってくれそうだと安心した瞬間、忘れそうになる。


思わず、普通に話してしまいそうになる。あくまでここにいる間、彼女は猫なんだから。


聞いてみれば、彼女も同じようにちょっと困ったのだろう。


少し難しい顔をしてから、頷いた。


「そうですか」
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