月の女神
気を付けなければと思いつつ
彼女も猫の設定に困っている顔を見て、その姿がかわいらしくて思わず笑ってしまいそうになる。
自分の顔を隠すために、テーブルへと戻る。
彼女も、読んでいた本を元に戻して机に寄ってきた。
飲もうとコップを両手で持った彼女は、パッとすぐに手を放す。
びっくりしたような顔と、反射的な動き。
何気なく様子を見ていた僕は、はっとする。
「すみません、忘れてました、猫舌……!」
熱いから気を付けてって言うのも忘れてた。
沸いたばかりのお湯を使ったんだ。かなり熱かっただろう。
自分の配慮のなさに申し訳なくなる。
「氷入れてちょっと冷ましましょうか?」
そうすれば、すぐに飲めるから。
「…いい、いいです」
氷を取りに行こうとした僕を制止した彼女に、大丈夫かなと思いつつ眺める。
彼女はコップの中を見つめたまま、パタパタと手でホットミルクを仰いでる。
その姿がとても可愛くて思わずにやけてしまった。
……あ、そうだ。
「……僕は早川 陽太と言います」
一口、コーヒーを飲んだ後、彼女に向けて自己紹介する。