月の女神
…知らないんだ。それなら、教えてあげよう。
「うん、るなって名前」
ゆっくりと話せば、彼女はその先が気になるようで僕を見つめる。
「古代ローマ……昔、ここから少し遠い同じ地球上の国でね、伝えられた神話…物語でね登場するんだ。月の女神ルーナが。日本ではルナって言われているんです。今でもローマ周辺の言葉では月そのものを指す言葉として使われています」
月の女神。綺麗で、尊い存在。
「じゃぁ、その国で私の名前を言えば、」
「月の女神、あるいは月だということです」
暗い夜を照らしてくれる、光である月。
その月の女神様。
素敵な由来、意味があるんだよ。
「君にぴったりの名前だね」
何もかもが嫌になって、そうなると良いように考えることもできなくて。
どんどん周りが塞がって行く、自分の気持ちは終わりのない闇に落ちて行きそうになる。
そんな状態だった僕を助けてくれて。
……さっきも。
「暗い中、見つけた君は女神のように綺麗だと思いました」
陽の当たる昼間、学校で制服を着た彼女を見かけることがほとんどだったけれど、
太陽が落ちて暗い中。
静かな空間で見る彼女はまた雰囲気ががらりと変わって似合うと思う。
笑顔が素敵だと思うけれど、なぜか影のある憂いを帯びた表情も素敵だと思うんだ。