月の女神
「るな。 月の女神を拾ったんだ。僕はラッキーだね」
――本当に、ラッキーだ。
こうして、君を助けるチャンスを貰えたのだから。
「…物知りなんですね。」
彼女も、僕の話で少しでも何か思ってくれるといいな。自分の名前を誇りに思ってほしい。
「これくらいしか知らないよ。日本史が専門だから」
ギリシャ神話は好きだからいくつか知ってるけれど、世界史はあまり得意ではない。僕は外人の名前を覚えるのはそんなに得意ではないらしい。
それに、自分の生まれた国のことも詳しく知らないのに他の国には…いけない。
「そういう話、もっと知りたい」
ぽつり、彼女が言う。
「本当?」
嬉しい。
どんな話がいいかな…。どんな話が彼女は好きだろうか。
「何がいいかな・・・考えとくね」
彼女は頷いて、そこで初めてホットミルクを飲んだ。
まだ熱さに警戒しているのか、ゆっくりとコップを傾けてから喉を鳴らす。
ふわっと安心したように力が抜けた彼女の表情を見て、安心する。
「はちみつをね、少し多めに入れたんです。甘いでしょ?」
聞けば、こくりとコップに口を付けたまま頷く。
「美味しい?」
頷きながらゆっくりと飲んでいる彼女。気に入ってくれると嬉しいけど。
「……君は本当に女神だよ」
彼女を見ているだけで、僕がなぜか、幸せな気持ちになるんだ。