月の女神




彼女との生活はとても困った。

びっくりするくらいの少食。

お腹はさすがに空くみたいだけれど

一回の食事量は少ないらしくそんなに食べていないのにお腹いっぱいだと言う顔をする。

それで足りるの?と思うけれど。


それでも彼女は残すことを申し訳ないと思っているのだろう。

僕が出した量はほとんど残さず食べてくれる。


もう少し食べてほしいけれど、無理はさせたくないから毎日彼女がちょうどよく食べれる量を探している。


全部食べれた日は足りなかったかな、もう少しついでおけば良かったかなと思う。

逆に食べ終わったけれど苦しそうな顔を必死で隠そうとしている時は多すぎたと申し訳なくなる。

試行錯誤の毎日だけど、それが嬉しい。

そして、僕の作った料理を食べ終わると、いつも「美味しかったです」と言ってくれる。





…初めて夜ご飯を一緒に食べた時は驚いた。


僕は両親と兄・姉の5人家族で夜ご飯を食べる時、

全員がそろうことはなかなか無かったけれど誰かしらとは一緒に食べていた為、一人で食べると言うことが無かった。

母が専業主婦だったこともあって一緒に食べなくても僕が食べるときにはリビングにいて会話をしながら食べることが当たり前だった。


だから、誰かと食事をしながら食べることに感動していたるなを見た時はびっくりした。


いつも一人で食べることが当たり前だったという彼女。


人それぞれの「当たりまえ」があって、その感覚の違いは、教えて貰わないと気付けない。

< 40 / 60 >

この作品をシェア

pagetop