月の女神
「こんにちは」

穏やかそうに眠るお母さんに挨拶をして、座る。


学校の人に会うと面倒なので、生徒は来ることがないだろう昼休みのわずかな時間でこの場所に来ている。


るなは学校に行っていないのでもしかしたら会ってしまうかも…と思っていたけれど、

るなは毎日自分の家に帰っているらしい。

そこで着替え等をすませ、夕方に母親の見舞いに行ってそのまま僕の家に帰っているみたいだ。

それを聞いてからは毎日昼休みに来ている。

大事な娘さんを預かっているから、その報告も兼ねて。


「昨日は、るなは久しぶりに昼寝をしたと言っていました」


主に昨日の彼女の様子を報告させてもらうだけ。

昼休みは1時間。

学校に戻らないといけないから本当に少しの時間しかいられないけれど、僕の日課になった。


「少しずつ、こんな僕にも心を開いてくれているみたいなんです。自分から話してくれることも増えてきたんですよ」

穏やかな呼吸を繰り返するなのお母さんに今は一方的に僕が話してばかりだけれど、いつか。

目が覚めた時には彼女からるなの話も聞いてみたいな、といつも思う。


早く、目が覚めますように。

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