月の女神
へらり、と笑う結真に僕は僕たち以外誰もいないとは分かっているけれど辺りを見渡してしまう。


こんなこと他の先生に聞かれたら問題だ。


「何。事実じゃん」

「それは、違うって。ただ助けられたなーってだけで」

結真に言ったのが間違いだった。

正しくは吐かされた、だけど。

入学したばかりの病んでた時、教えることの難しさに悩んでいた僕はよく結真に相談していた。

この学校で同期は結真だけ。


結真は結真で生徒との関わり方に悩んでいたようだけれど(特に女子生徒)。


るなに助けてもらった後、様子が変わったらしい僕を居酒屋へ連れて行き無理やり酔わされてあの話を吐かされた。

僕も吹っ切れた嬉しさと酔っていたことから彼女の感謝をひらすら述べていたらしいけれど…。


それ以来何かとネタにされからかわれる。

「あの子、今不登校になってるらしいね」

「あぁ…」

結真も普通科の担当だから、英語科の方は知らないはずだけれど、生徒の話は耳にしたのだろう。

「なのに嬉しそうなのはなんで?」

「え?」


「何、学校辞めたら告白しちゃおうとか考えてるわけ?」

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