月の女神
真面目な僕と、一瞬きょとんとした結真。
「何、そんな話、わざわざ溜めて―――」
そこまで言って、表情が変わる。
気の抜けていた顔から、状況を理解して厳しい顔に。
その中に、驚きの色も見える。
感もいい結真のこと。きっと、そこで僕の言った意味を察したのだろう。
僕が言っている「猫」がただの「猫」なんかじゃないってことを。
僕としてはあんまり誇れる話ではないのだけれど、いつも涼しい顔をしている結真の驚いている顔を見れて少し嬉しくなった。
「…お前、」
まさか、と言われて、頷く。
「僕の家で、保護してる」
――そこから、るなの話をした。
どうやってるなと接触したのか、どうして僕の家で一緒に住むことになったのか。
毎日、昼休みに彼女のお母さんのお見舞いに行っていることから、今のるなの様子まで。
やはり結真も学校にきていないことは知っていたみたいだけれど、彼女の家庭事情は今の彼女の状態までは知らなかったらしい。
僕の知っている全てを話している間、黙って聞いていた結真。
「…陽太」
「ん?」
「気を付けなよ」