月の女神
一言。
それしか言わなかった結真に感謝する。
表情を見る限り、何かあれば言ってと言ってくれていると理解して、自然と笑顔が浮かんでしまう。
結真は厳しい顔をしているけれど。今すぐそんなことやめろ、なんて反対されなかったのはありがたい。
「それにしても…猫ねぇ…」
「っ!」
「もっとマシな釣り方しろよ」
「……それは自分でも後悔してるから言わないで」
結真には弱みばかり握られる。まぁ僕も、彼の最大の弱みを握ってるけれど。
「飼ってる間、他の先生と飲み会行くなよ。行っても車で行きなよ」
「分かってるよ。大丈夫、行かないから」
お酒、そんなに強くないし。だからこそ結真に酔っていろいろと吐かされたのだけど。
「それにしても…生徒にもバレたらお前、刺されるぞー」
「……え?」
「その猫のこと好きな男子とかに」
「あぁ……、気を付けるよ…」
今刺されてしまったら、るなのお世話ができなくなってしまう。
それに、学校に復帰してきたとき、るなの立場が悪くなってしまう。絶対にそんなことにならないようにしないといけないんだ。
「自分の好きな子が教師と一緒に住んでるとか、例として考えただけでもクソ腹立つ」