月の女神









「違うクラスを、ですか?」


「英語科のクラスなんだけどね、担当の新木先生がぎっくり腰で」


日に日に溜まって行く自分に対する嫌悪感をどこにもやれずに、ひたすら授業をしていたある日。


声をかけてくれたのは、学年主任の先生。


新木先生が今朝ぎっくり腰になったことは知っている。なんでも、お孫さんをだっこしてあげようとして力んだ際にぐきっとやってしまったとか。


用事や都合で教科担任が授業できない時は

大抵他の教科の先生と都合をつけて教科の日程を入れ替えたり、

自習時間にするから、今回もそうなるだろうと思っていたけれど…。


学年主任は僕に、代わりに授業をやらないかと提案してきた。


「自習でもいいんだけど…英語科は、普通科に比べれば、浅い範囲だし、先生まだ授業に慣れてないでしょう?

どうせ自習になる回だったんだし、気軽に練習だと思って授業してみない?」


どうですか、と聞かれて、正直戸惑ってしまう。



この学校は、普通科と英語科がある。


僕の担当しているのは、普通科の一年生の3クラスと2年生の文系クラス。英語科は担当していない。


英語科はほとんどの授業を英語教科が占めていて、主要五教科は普通科よりは授業数が少ないが行われる。


僕の日本史は1年生の1年間で浅く、広くの基本的な部分だけを履修するカリキュラムとなっている。


普通科よりも深く教えなくていいけれど…。

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