月の女神


「お前…自分の仕事忘れるなよ。猫のことで幸せボケしすぎ」


「……」


すっかり忘れてしまっていた。


「…残念だけど、最初の危機かもね」

普段めったに同じ場所に揃うことのない普通科と英語科が揃う機会。


それも、ホテルで1泊付きという長時間。


「でも、彼女は休むんじゃ…」


彼女は今、学校に来ていない。


それに1泊なら毎日欠かさず行っているお母さんのお見舞いにも行けなくなる。


学外研修よりも彼女は休んで家にいることを望むんじゃないかな。


勉強や、みんなとわいわいする気分じゃないはず。


僕は休むなんてできないから行かなければいけない。


1日家を空けることになってるなを一人にしてしまうことは申し訳ないけれど…。


だから、きっと大丈夫なはず。


そう思ったけれど、結真はふーっと息を吐きだして話し出す。


「そっか。去年は美術館と音楽鑑賞だったし、陽太は研究授業の見学に行ってたから関係なかったんだっけ」


「え?」



言われて思い返す。

< 52 / 60 >

この作品をシェア

pagetop