月の女神

動き出してすぐに始まったカラオケ大会。

これから一日は長いし寝ようかなと思ったけれど、車内うるさくて寝れなかった。

だけど、そのおかげで結真のように話しかけられることもなくて、みんなわいわい盛り上がって終わったかな。



「カラオケかー…。帰りバス交代しない?」


「…遠慮しとく」

本気で代わってほしそうだけど、僕も質問攻めはちょっと嫌だ。


笑顔で返せば、不満そうな顔が返ってきた。

「今日寝れないから少しでも寝ときたいんだけどな…」

今から研修が終わるまでのスケジュールを考えると、そうだよね。

「学生の時みたいに徹夜とかしたくないし」

「仮眠の時にがっつり寝るしかないよね…」

「せっかくホテルで寝れるのにがっつり寝れないのか…」

「しょうがないよ」

昔は寝なさいって言われても寝ずに起きてられたのになぁ。

もう徹夜すると、次の日が辛すぎるからなぁ…。




「…あ、佐田先生、向こうも点呼と注意、終わったらしいので」


英語科の先生から連絡があったのだろう。

話し終えた普通科担当の先生が、携帯を片手に結真に声をかける。


「あ、はい。美術館の方ですよね。行きます」



「えーー…先生行っちゃうの?」



「なんで英語科の方なのー」


一番最前列の子たちをはじめ、ざわざわと嘆きだす生徒。


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