KritO
家に着くと、私は足がすくんでしまう。
手が震える。
もうあんなことは起こらないとわかっているのに、このドアを開けてしまえばまた繰り返すんだと。
そして私はこの家に、厄しかもたらさないから。
ここまで考えても、結局はゆっくりドアを開けるんだ。だって、ここにしか私の帰る場所はないんだから。
ドアを開けるとそこには、普通の家より暗い家の中。雰囲気なのか、物理的になのかはわからない。これもいつも通り。
私はできるだけ音を立てないように自分の部屋に戻る。
おじさんとおばさんが早く眠る人で良かった。
部屋の前に着いたとき、隣の部屋から人が出てきた。…考えられるのは1人だが。
暗くてよくわからないが、その人物は今私をじっと見つめている。
「……おかえり、桐。」
私は何とも表せないような気持ちになり、彼に……兄さんに返事をせずに部屋に入った。