魅惑な彼女
「はい、お兄ちゃんこれ」
未亜のぎこちない『お兄ちゃん』という呼び名を聞きながら奏が豚のしょうが焼きを食べていた。
そこに未亜は奏に学校の手紙を差し出す。
「なんだこれ?」
「学校を高校まで続けるかどうか。このままセリーヌに残るか外部受けるか」
「ふーん、未亜はセリーヌ残るんだろ?」
ううん、と未亜は言う。
「私ね榊高校受けようと思うんだ」
思わず奏は肉を落としそうになる。
「未亜、お前何言って……」
「だから私お兄ちゃんと一緒の榊高校行くの!これ決定ね」
席を立って2階にある自室へ向かう。
後ろからは奏の声が聞こえるけど気にしない。
今日交換したばかりの御幸のメアドにメールを送ってみる。
『今日初めてお兄ちゃんに意見言いました。わがままに生きてみようと思います』
送信してしばらくするとすぐに御幸から返事が返ってきた。
『よかったじゃん。おめでとう』
短い文だけどそれだけで嬉しく思える。
心が温かくなる。
この人なら信じていいと思える。
そのメールを保存してベッドへと飛び乗る。
榊高校へ行きたい理由。
それは芹沢御幸に会いたいから。