真っ暗な世界で
「…榛ちゃん、榛ちゃっ…うわぁん……」


夏希ちゃんはせきをきったように私にしがみついて泣いた。夏希ちゃんの涙で私の服が濡れていく。でも、そんなこと、気にならなかった。


私は無我夢中で夏希ちゃんを抱き締め続けた。


大丈夫だよ。私が、いるよ。安心して。一人にしないから。


心の中で必死にそう呟いていた。


夏希ちゃんは必死で虚勢を張っていた。いや、虚勢と言っては言い過ぎかもしれない。本来の自分を誇張させていた。生きていくために。


その日を境に、私と夏希ちゃんの距離はぐんと近くなった。



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