真っ暗な世界で

小姓の嘘 土方side

春に新選組の襲撃を計画したマヌケ共を粛清するよう、言った晩のことだった。


溜まりに溜まっていた書類の山が一段落したところで茶をもらおうと腰を浮かした。


「あー……。春、いねぇんだった」


咲洲に茶をもらうのは、自殺行為だ。


茶を飲むことを諦め、なんとなく部屋を見回すと、


「……あったよ」


入り口付近にちょこんと茶があった。


春だ。


歩いてその茶を手に取ると、まだ、少しだけ温い。


斎藤は、きちんと準備してくれているのだろうか。


いや、心配は必要ないだろう。


なにせ、真面目な斎藤だ。それに、最近は春とも親しいらしいからな。二人が一緒になれば、怖いものなどない。


俺は自分自身にそう言い聞かせ、茶を一口飲んだ。


春が心配なのは、目が見えないからではないと自分で分かっていた。


目が見えなくても、春は十分すぎるほどの強さがある。心も強い。


だが……。


なんだろうか。この、どうしようもない不安と、針に刺されたような鋭い胸の痛みは。


「……わっかんねぇな」


わざと乱暴にそういうと、残っていた茶を一息で飲み干した。





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