真っ暗な世界で
「……でも、春ってたまに怖くなる」


「ん?平助どうした?」


先ほどまで明るかった平助の声色が段々暗くなっていく。


「春は、いつでも無表情だろ?土方さんの命令でしか動かないし……。こいつ、人形なんじゃねぇかって思うんだよ……」


「……平助。違うさ」


「佐之さん?」


「春は人形じゃねぇよ。きちんと人間の感情を持ってる」


「人間の感情を持ってる奴にあんな残忍なこと、出来るかよっ!!俺は見たんだ!!あれはもう……!」


床を殴ったのか、ドンッという音が聞こえる。


「平助!時間帯考えろ!」


永倉が激昂した平助を諌める。


「あぁ……。すまねぇ」


「平助。お前は知らない。春だって好きであんなことしたんじゃないんだよ」


「分かってるよ。誰が好き好んであんなことするかよ」


平助は声を抑えつつ、吐き捨てるように言った。


「春は、あの晩、吐いてたよ」


原田が、そう悲しそうに言った瞬間、俺は目を見開いた。


まさか、春が?


「えっ……?」


平助も、永倉も同じ気持ちだったらしい。驚きが隠せないようだ。


俺は、部屋に入るのをやめ、なるべく音を立てないように平助の部屋を通り過ぎた。






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