真っ暗な世界で
そこにいたのは、青白い顔をした春……であるはずなんだけどな……?


あの、なんていうんだ?えっと、あー……女特有の?っていうか、女の象徴?………………あ″ー!!むむ胸があったんだよ!!春に!!!!


目を疑うような光景に思考回路がついていかない。


あれ?春って男だよな、あるはずねぇよな。あれか??男でも、胸板が厚いだけとか??あー!なるほど、そうか!胸板が厚いだけ……


一度、視線を外して、再度春を見る。


視線が下に下がる。


…………………………あぁぁぁぁあ!!ちげぇよ!!どこをどう見れば胸板にみえるんだよ、この馬鹿が!!


一人で打ちひしがれていると、山崎の怒号が飛んできた。


「お二方!!ゆっくりする暇なんかないねんで!?」


珍しく怒鳴り散らしながらこっちに向かって、春を見て、山崎もまた、数秒固まった。


「………………あ、あぁ。咲洲。やってくれ」


流石は医学をかじった者。少しの動揺を見せたものの、すぐに解決策を打ち出し、実行する。


咲洲は不審そうに俺達を見ながら、春に近寄り、目を見開く。


「…………マジかよぉぉぉお!?」


「咲洲!さっさとやれや!」


数秒は驚いて叫んでいたが、山崎に怒鳴られ、慌てて服を脱がせ、春をうつぶせにさせた。


その後、俺達三人は集中力がかけるからと医務室から追い出された。


黙って広間に向かう俺達。


無意識に、ぽろりと言葉が口からこぼれだした。


「春が…………」


「……お、お、女子」


「だったなんて……」


俺、斎藤、咲洲の順につぶやいた。


未だに信じられない。


確かに、言われてみれば納得することが多い。


動作のひとつひとつとか、言葉遣いとか
、声とか。


信じられないというより、信じたくないと言ったほうが適当かもしれない。


だが、何故か春が女でどこか安心している自分もいる。


その矛盾が俺の心を余計にややこしくしていた。















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