真っ暗な世界で
はぁ……とため息をしているうちに広間についた。


広間には、既に幹部が揃っている。


襖を開ければ、皆、心配そうな、不安そうな顔をして、俺達三人をいっせいにみた。


「トシ!春くんは!?」


「わからねぇ。今、山崎がやってる」


暗い顔でそう言えば、近藤さんは項垂れた。


近藤さんにとって、春は息子みたいな存在なんだろう。いや、今になっては娘か。


「珍しいよね。春くんがやられるなんてさ」


珍しく真面目な総司が、刀を肩にかけて広間全体を見渡しながら言った。


まるで、春を傷付けたやつを探して、斬ってやるというように。


その場にいた全員が、総司の殺気に黙りこむ。


そんな重苦しい雰囲気の中、咲洲が言葉を発した。


「私が、私があの場にいなければ…………ごめん!!!」


そう言いながら、土下座する咲洲。


それには幹部全員が驚いた。


皆、咲洲の頭を上げるよう言う中で、総司だけは冷たい目をして、咲洲を見ていた。


「ねぇ、それってどういうこと?」


「ハルがいなくなって、探しまわってる時に、偶然見かけたんだ。ハルが誰かと話してるとこを。それで、今日の夜に奇襲することを知った。心配と好奇心で、バレないように斎藤に付いていったら、ハルが倒れているのを見て、夢中で走り出したんだ。そしたら、気絶してたはずの浪士が襲ってきて、ハルは私を庇って……ッ」 


「君が行って、どうなると思ったの?」


「総司!!」


あまりにも酷い総司の対応に平助が止めに入る。


咲洲は全身を震わせていて、見たことのないほど頼りなかった。


俺でさえ、見ていられないほど、罪悪感に押しつぶされそうになっていた。


「……わからない」


「なに?」


「分からない。けど、どうしても行かなきゃならない気がしたんだ。ハルだけにツラい思いをさせちゃいけないって、思ったんだよ……」


「なにそれ」


「総司!!玲那の気持ちも考えろよ!」


冷酷すぎる総司の言葉に平助がとうとう怒り、胸ぐらをつかむ。


「ふざけてんの!?なにが春くんだけにツラい思いをさせちゃいけないと思っただよ!!その軽率な行動で、春くんが死にかけてるんだ!!!」


総司が平助を真っ直ぐに睨みながら怒鳴った。


総司がこれほどまで怒りの感情を顕にするのは珍しく、俺は密かに驚いた。


総司は言いすぎだ。だが、総司のいうことにも賛同出来た。


咲洲が好奇心に負け、ついていかなければ、少なくとも、あれほどの重症にはならなかったのだから。


「やめないかい、平助、総司!」


今にも殴りあいそうな雰囲気を醸し出していた二人は、近藤さんに一喝され、数秒無言で睨み合った後、しかたなさそうに離れた。








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