真っ暗な世界で
「……言いにくんだが……」


今、春が女だったとは言いだしづらい。


だが、近いうちに言わなければならないことなので、意を決して口を開いた。


「……実は春は女だったんだ」


「………………今、いう冗談じゃないでしょ、土方さん」


やはり、信じてはもらえない。


俺でさえ、信じることが出来なかったのだから。


そこで、斎藤を見ると、斎藤はこくりと頷いて俺の後を続けた。


「総司。本当だ……」


「何?一くんまで………………………本当なの?」


少し間をおいて、総司が怪訝そうにそう言えば、俺と斎藤と咲洲は二回ほど頷いた。


幹部は全員、顔を見合わせて三秒後、叫んだ。














「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」




















…………うるせぇぇ!!


そう思ったのは俺だけじゃないらしく、斎藤も咲洲も顔にうるさいと書いてある。


「じゃぁ、春くん僕達を騙してたの」


驚いて固まっていたと思っていた総司が咲洲を責めていた時よりもずっと黒い雰囲気を纏う。


…………やべぇな、これ。


総司は警戒心が強い分、信用すると、盲信的に信じ抜く。近藤さんがその例だ。それは、総司の良い所でもあるんだが、致命的な欠点でもある。


なぜなら…………


「………敵、となるのかな」


騙されていたことが分かると、手のひらを返したように、片っ端から相手を敵とみなすからだ。


それも、質が悪いことに、事情や弁解を一切聞かないのだ。


どんなに本当のことを必死で訴えても、「裏切られた」と思い込んでいる総司にはなにもかもが無駄。


ただ、総司の刀が自分の首に突き刺さるのを待つしかない。


今、春は同じ状況に陥っている。


このままいけば間違いなく、総司の刀の餌食となる。


それだけは避けたい。なんとしても避けたい。


だが、そのためには、どうすればいい?


近藤さんでも、止めることが難しいのに、俺となれば、不可能だろう。


考えているうちに、山崎が広間の襖を開け、入ってきた。


「……春の治療が終わりました。一人、春についていて欲しいんやけど、誰か、いまへんか?」


「春くんは、無事なのかい?」


近藤さんが聞くと、山崎は黙って頷いた。


その山崎の頷きに、皆がほっと息をつく。だが、雰囲気はどこか暗い。


複雑なんだ。何も知らない頃は、素直に喜べた仲間の安否も、騙されていたと知ったから、素直に喜べない。


「私、ハルについてる」

























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