真っ暗な世界で
謹慎を言い渡され、屯所のはずれにある日も当たらない部屋に移動してから2週間が経った。


ここに来るのは、背中の傷の具合を診る山崎さんだけ。ちなみに、食事の配膳も山崎さんだ。


何かを観ようとする必要も、聴く必要も、話す必要もなにもない。なにもないと、全てを忘れそうで少しだけ怖い。


怖いけれど、それを解決する方法はないので、私は風の音を聞きながら、布団を畳まず、下半身にかけたまま、壁に背をもたれる。


風の優しい音を聞きながら、深く深呼吸をすると、つんと鋭い寒さが鼻に刺さった。


そして、自分の体を抱きしめて眠る。


毎日、ただひたすらにそれを繰り返すだけの日々。


そんな日々が最近、変わってきた。


「お姉ちゃん、いるー?」


「はい、いますよ」


パタパタと無邪気に駆け寄ってきたのはゲンという近所の男の子。


私がこの部屋に来たとき、沖田さんとかくれんぼでもしていたのだろうか。ごく自然に部屋に入ってきた。


ゲンくんは、ビックリして泣きそうになったので、慌てて話をすると、何故か懐かれ、沖田さんと遊ぶたびにここに来ていた。


私の膝にちょこんと座り、私をぎゅーっと抱きしめる。


「ねぇねぇ!今日は、どんなお話??」


「今日は、悪魔と男の子の話ですね」


「あくま……?」


「悪魔とは、人にイタズラをする悪い生き物なんですよ」


「へぇー!!」


鬼みたいだねとゲンくんは笑った。


「ある日、男の子はお婆さんの病気を治すために街のはずれにある森に薬草を取りに行きました」




























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