真っ暗な世界で
『榛ちゃんを離して!!!!』
夏希ちゃんはそう言うや否や男の手と私の手を力いっぱいに離した。
その拍子に私はよろけて、転びそうになったが、夏希ちゃんが私の腕をしっかりと掴んでいて、それはまぬがれた。
『夏希ちゃん。これは、どういう意味かな?』
男は夏希ちゃんと私を交互に見ながら、少し面白くなさそうに言った。
『榛ちゃんを殺さないで』
『じゃぁ、君が死ぬかい?』
『…………っ!』
『…………出来ないだろう?ほら、行くよ。榛ちゃん』
言葉に詰まった夏希ちゃんを見て、得意そうに男は言って、私の手をとってまた歩き出した。
さっきよりも、あの真っ赤な口に近づいていく。
もう、ダメなんだ。私は、私は…………。
『わ、私を!!榛ちゃんの代わりに私を!!だから、お願い!榛ちゃんを殺さないで!!』
夏希ちゃんがそう叫んだ瞬間、ピタリと男の足が止まった。
その時、私ははっきりと見た。
男の顔が、コンクリートの扉から漏れた光に照らされて、とても嬉しそうに笑っていた。
顔色は悪く、頬は痩け、そばかすだらけのその顔に歓喜の色がハッキリと見えた。
こいつ……………!!!!最初から!!!
『……そっかぁ、君が代わりに、ね』
夏希ちゃんの言葉を噛みしめるように復唱する。
そして、それが終わると私の手を離し、夏希ちゃんの手をとった。
私を通り過ぎてあのコンクリートの扉の向こうへと行く二人。
『……っあ、夏希ちゃん!!』
行かなきゃ。行かなきゃ。夏希ちゃんを助けなきゃ。
でも、助けたら、私が死ぬ…………?
そう思うと、足が竦んで動かない。
私の中で、天使と悪魔が戦っている。
__助けなきゃ。何を迷ってるの。夏希ちゃんは私の大切な友達。親友でしょ?親友が死んでもいいの?
__いいの?私が、死んじゃうんだよ?夏希ちゃんが代わりに死んでくれるんだよ。また、パパとママに会いたいでしょ?
やめて!!私は、私は…………!!
我に返ったのは、夏希ちゃんが扉の中に入る直前、私を見て笑った時だった。
『榛ちゃん!大好きだよ!!……私の分まで生きてね』
初めて見たその笑顔がとても綺麗で。
最期の最後まで、私に温かみをくれた。
段々と扉の奥に消えていく夏希ちゃん。
『……いや……いや……いやぁぁぁぁぁあ!!』
生まれて初めてなんじゃないかと思うくらいの大声で叫ぶと、私の体はふっと軽くなった。
その勢いで私は扉へと走りだす。
『夏希ちゃん、夏希ちゃん!!』
行かないで。死なないで。あなたが死んでしまうくらいなら、私が死ぬから。
お願いだから、いなくならないで。私の世界から消えないで!!!
私がドアノブに手をかけた瞬間、ガチャンと鍵がかかった。
あと、一歩遅かった。
夏希ちゃんはそう言うや否や男の手と私の手を力いっぱいに離した。
その拍子に私はよろけて、転びそうになったが、夏希ちゃんが私の腕をしっかりと掴んでいて、それはまぬがれた。
『夏希ちゃん。これは、どういう意味かな?』
男は夏希ちゃんと私を交互に見ながら、少し面白くなさそうに言った。
『榛ちゃんを殺さないで』
『じゃぁ、君が死ぬかい?』
『…………っ!』
『…………出来ないだろう?ほら、行くよ。榛ちゃん』
言葉に詰まった夏希ちゃんを見て、得意そうに男は言って、私の手をとってまた歩き出した。
さっきよりも、あの真っ赤な口に近づいていく。
もう、ダメなんだ。私は、私は…………。
『わ、私を!!榛ちゃんの代わりに私を!!だから、お願い!榛ちゃんを殺さないで!!』
夏希ちゃんがそう叫んだ瞬間、ピタリと男の足が止まった。
その時、私ははっきりと見た。
男の顔が、コンクリートの扉から漏れた光に照らされて、とても嬉しそうに笑っていた。
顔色は悪く、頬は痩け、そばかすだらけのその顔に歓喜の色がハッキリと見えた。
こいつ……………!!!!最初から!!!
『……そっかぁ、君が代わりに、ね』
夏希ちゃんの言葉を噛みしめるように復唱する。
そして、それが終わると私の手を離し、夏希ちゃんの手をとった。
私を通り過ぎてあのコンクリートの扉の向こうへと行く二人。
『……っあ、夏希ちゃん!!』
行かなきゃ。行かなきゃ。夏希ちゃんを助けなきゃ。
でも、助けたら、私が死ぬ…………?
そう思うと、足が竦んで動かない。
私の中で、天使と悪魔が戦っている。
__助けなきゃ。何を迷ってるの。夏希ちゃんは私の大切な友達。親友でしょ?親友が死んでもいいの?
__いいの?私が、死んじゃうんだよ?夏希ちゃんが代わりに死んでくれるんだよ。また、パパとママに会いたいでしょ?
やめて!!私は、私は…………!!
我に返ったのは、夏希ちゃんが扉の中に入る直前、私を見て笑った時だった。
『榛ちゃん!大好きだよ!!……私の分まで生きてね』
初めて見たその笑顔がとても綺麗で。
最期の最後まで、私に温かみをくれた。
段々と扉の奥に消えていく夏希ちゃん。
『……いや……いや……いやぁぁぁぁぁあ!!』
生まれて初めてなんじゃないかと思うくらいの大声で叫ぶと、私の体はふっと軽くなった。
その勢いで私は扉へと走りだす。
『夏希ちゃん、夏希ちゃん!!』
行かないで。死なないで。あなたが死んでしまうくらいなら、私が死ぬから。
お願いだから、いなくならないで。私の世界から消えないで!!!
私がドアノブに手をかけた瞬間、ガチャンと鍵がかかった。
あと、一歩遅かった。