真っ暗な世界で
『…………あ、あ……あけて……』


無機質なコンクリートの扉を、トンと軽く叩く。


中にいるのは、男と夏希ちゃん。


この扉を開けなければ、夏希ちゃんは死んじゃうの。


『……開けて!!開けてよ!ねぇ、開けて!!!開けて!!開けなさいよ!!』


ドンドンとさっきよりも強く、思いっきり扉を叩く。


手が痛くなる。扉と擦れて、血がにじむ。


そんなの、知るもんか。


どんなに叩いても、扉はびくともしない。


とうとう私は力尽きて、その場にへなへやと座り込んだ。


…………助けられなかった。























助けられなかった!!!!!!


『いやあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!』


私が振り返って、死にたくないって言わなければ!!


私が夏希ちゃんが代わりに死んでくれるなら、なんて思わなければ!!


…………私のせいで死んだ!!


私が夏希ちゃんと仲良くなったから!!


次々に、後悔が私に流れこんでくる。


元はと言えば、この状況を作り上げたのは…………楓花だ。


それに気付いた私は、楓花を睨んだ。


……楓花が私の目隠しを外したりしなければ、こんなことにはならなかった。全ては、コイツのせいだ!


憎しみって、こんな感情なんだ。


そういえば、怖いとか、悲しいという感情は幾度となく感じていたが、憎しみという感情だけは感じたことはなかった。


こんなにも醜くて、抗えない。


その感情に任せ、楓花に近づいて胸ぐらを掴んだ。


『ヒッ……』


楓花が怯えた顔で私をみる。


『……あんたが、嘘さえつかなければ……あんたが、私の目隠しを外したりしなかったら…………夏希ちゃんは死ななかった!!あんたが、楓花が夏希ちゃんを殺したのよ!あいつと同罪だ!!!』


私がそう怒鳴ると、楓花は泣きだした。


『うぇっ、うぇぇぇえん!!だって、だって、榛ちゃんが、楓花の、いうごど、ぎかないがらだよぉー!楓花、同罪なんかじゃないもん!!楓花、悪くないもん!うぇぇぇぇえん!!』


その言葉を聞いて、私は唖然とした。


確かに楓花には何度か命令みたいなことをされた。だけど、私はそれを無視し続けた。


私にとって、この環境の中信頼出来たのは夏希ちゃんただ一人。だから、私は他の人と関わることを拒んだ。


楓花はそれが気に入らなかったのだ。


きっと、甘やかされて生きてきたから。誰もが楓花を可愛がり、ひれ伏してきたから。


そんな……そんなことで、こんな馬鹿げたことを。


『……あんたって人は……』


『おいで、榛ちゃん』


また楓花の胸ぐらを掴み、罵ろうとした時だった。


固く閉ざされていたはずの扉が開き、男が私を呼んでいた。


____夏希ちゃん。


私の脳内にその名前が浮かぶと、無意識に男に向かって歩いていた。


男が何をしたかったのかなんて、どうだっていい。何故か今は行かなきゃいけない気がした。

















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