真っ暗な世界で
両手で頭を抑えて首を横に振る私に男はさらに笑って続けた。


『君は人殺しだ。だぁれにも愛されない、可哀想な子なんだ。僕と同じ非情な人間なんだよ』


『嫌だ!違う!私は、私は……!!』


人殺しなんかじゃない。


その一言が私の喉に突っかかって出てくるのを拒んでる。


『……ちが…わない……人殺し…榛ちゃん…人殺し……』


背後に、もう二度と聞こえるはずのない声が聞こえて、私は振り向いた。


『…!?』


そこには血だらけで生気のない顔をして私を見つめる夏希ちゃんがいた。


『……人殺し……榛ちゃんが…助けて、なんて…言わなければ…私は、しな…なかった……のに』


そう言いながら私に向かって這ってくる。


逃げなきゃ、と思っているのに、体が鉛のように動かない。


『……いや……来ないで…』


か細い声で言っても、夏希ちゃんには聞こえず、私の太ももまで来ていた。


やがて、夏希ちゃんの手は私の首を包み込んで、私は床に押し倒された。


夏希ちゃんはそのまま手に力を入れて私の首を締めあげていき、私を憎悪の目で見下ろして、小さく呟いた。


『…この、人殺し……』


その一言で、私の中の何かが大きな音を立てて壊れていった。







『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ……!!!』








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