真っ暗な世界で
「………っ!?」


先ほどとは速さも勢いも違う。その極端な変化に驚いた。


「さっさと!黙って!俺に従え!!このクソ餓鬼ぃぃい!!」


闇雲に攻撃をしてくる佐久田は、明らかに正気ではないように思える。


「俺は…!俺は…!涼しい顔して、平気で仲間を殺したお前が憎いんだよ!!」


攻撃しながら、泣いているのだろうか。声が少し、上ずっている。


「血が……血が通ってないんだよ!お前には、一滴も!!この冷徹人間!!」


彼が発した冷徹人間なんて言葉は、私には効かない。生きるためと割りきった。


冷徹にならなければ、自分を守ることも、ましてや人を守ることも出来ないから。


それは、武士の端くれである佐久田もわかっているはず。これは、ただのヤツ当たりだ。


佐久田が息を整えている間に、仕留めようと構えた時だった。


「…この……人殺し!!」


『違わない。違わないんだよ。君は僕と同じだ。ひ・と・ご・ろ・し』


『…この、人殺し……』


佐久田の声音と男の声音。そして、夏希ちゃんの声音が、一瞬だけ、重なったように思えて、私の体は動かなくなった。


動いて………。動いて……!!!


私が、どんなに体に言い聞かせても、私の体はまるで他人のもののようにピクリとも動かない。


やばい………。このままだと、佐久田の攻撃を真っ向から受けてしまう。


焦りを感じ始めた時、佐久田が動く気配がした。


……………やられる!!!






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