真っ暗な世界で

歯車

目を覚ますと、雀の鳴き声と清々しい空気が肺に流れ込んできた。


……空気が、おいしいって、こういうことなんだ。


僅かに感動しながら、今日の行動を考えた。


取り合えず、街に出てみよう。


人が多いところは少し不安があるが、情報収集には打ってつけだ。


あと、職が必要だ。


どうにか目が見えなくても扱ってくれるところを探さなければ、やがて餓死してしまう。


そう考えて、街に出ることにした。


…………街がどこにあるかすら知らないけれど。


「………臭いを辿れば、耳を使えばなんとかなるでしょ」


我ながら頼りないな、と苦笑するしかなかった。

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