真っ暗な世界で
「どういうことだ、土方さん。俺ら、聞いてないんだが?」


気が付いたら、原田が険しい顔をして土方の胸ぐらを掴んでいた。


「………は、原田……?」


いつもは優しい兄さんみたいなのに、そのギャップに戸惑った。


「目が見えないことがどれだけ辛いか、俺らの中であんたが一番知ってるだろ!!」


土方は悔しそうな顔をして、原田から顔を背けた。


「……?土方、目が見えないのか?」


そんなことは、本にも、どこにも書いてなかった気がするけど。


原田が感情任せに言ったことの意味が分からず、近くにいた平助に小声で聞いた。


「ちがうよ。土方さんの一番上の兄貴が盲目なんだ」


平助も、小声でそう答えた。


その答えに、頷いた。


なるほど、だから、一番なのか。


「てか、ほんとにハルって、目が見えねぇの?」


今度は逆に平助が私に質問したが、それに答えることは出来なかった。


原田が、悲しげに言葉を続けたからだ。


「なんで、俺らには教えてくれねぇんだよ。俺らはそんなに信用ならねぇか?」


「…………」


「幻滅した、ハルをそんなに危険な目に合わせていたなんて」


「………………」


「何とか言えよ!土方さん!!」


原田が右腕を振り上げた瞬間、大きな衝突音が聞こえた。


ドンッ!!


全員がその音で動きを止める。


そして、音が出た場所をみていると、襖が開いた。


「…………榛……」


土方が小さく呟いた。


「……予想通りでした」


ハルは無表情で、そう言った。


ハルはいつも無表情だ。


ご飯食べていたって、みんなで談笑している時だって、無口で、無表情だった。


ハルは数歩進むと瞼をゆっくりと閉じて深呼吸をした。













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