真っ暗な世界で
「人間の歩幅は、身長−100と言われています。私の身長は146cmなので、146−100=46。つまり、私の歩幅は約46cm。

ここから、向かいの壁までは10歩、歩きます。つまり、46×10=4.6m。この広間は、縦が短く、横が長い長方形。横は20歩、歩きます。つまり、46×20=9.2m。さらに、この部屋の面積は4.6×9.2=42.32㎡……」


突然、話し始めたハル。


しかも、尋常じゃないくらいの量を話してる。


私には、歩幅がどうのこうの……位しか頭に入らない。


×とか、−とか、mとか、こいつらがわかるわけ無いだろ。


皆に伝わらないといけないのに、ハルは一方的に話している。


ほら、みろ。皆、ポカンとしてる。


「……ハルが………話してる」


永倉が、ポツリと呟いた。


「……初めて、こんなに話すとこみた……」


沖田も、一人呟く。


永倉と沖田の言葉に、全員が頷く。


うんうん、じゃなくて、内容、どうなの!?わかってんの!?てか、それ以前に聞いてたか!?


「せんちめーとるやら、めーとるは分からんが、大体は分かったぞ」


私の心の声は漏れていたらしい。ハルは話すのをやめて、土方は腕組みしながら私に向かってドヤ顔しやがった。


「…………へ?」


だけど、今はそのドヤ顔の存在が薄くなるくらいに驚いていた。


「足算や引算、掛算と割算位なら普通に出来るぞ?面積も、問題はないっ」


平助も、拳をつくって、ニカッと笑う。


「江戸時代の一般人の学力は世界トップクラス。トップクラスなら、これくらいの計算なんて朝飯前でしょう」


ハルも呆れたように、首を左右に振って、息を吐いた。





< 155 / 195 >

この作品をシェア

pagetop