真っ暗な世界で
「新選組に入隊したのも、観察方になったのも、目が見えないことを黙っていたのも、全て私の意思で決めたことです。土方さんを責めるのはお門違いです」


ハルは、そう言い切った。


「なんで、黙ってた?」


原田は土方の襟を離して、ハルを睨んだ。


「敵をだますには、まず味方から。ですよ」


「ざけんな、ハルのそれは適応外だ」


「何故?私には必要なことです」


「危ないだろ。そうでなくても、女だってだけで不利なのに…」


「不利ならば、それを有利に変えればいいだけのこと」


「有利にしても、至らない部分は出てくるぞ」


「それも、至るようにすればいいこと」


ハルは相変わらずの無表情で、原田は怒った顔で、睨み合っている。


双方に歩み寄る気配はなく、ただただ押し問答が続くだけ。


「何故、俺らを信用しないんだ?信用されなければ、こっちも信用できねぇよ」


「…信用、ですか。それは咲洲が言っていたのと同じものですね」


「え?私?」


突然、穂先を向けられて、戸惑ってしまった。


え?私、何言ったっけ?あ、そうだ。信頼関係がなんたら言ったな。えらいカッコつけて………カッコつけてとか恥ずかしッ!やべぇ。私、恥ずかしッ!


うわぁあと叫びたくなる気持ちを抑えて、ぐぉぉおと唸った。


「…え、玲那、どしたの……」


隣の沖田から若干引く声が聞こえたけど、気にしない。気にしないんだ!


まてまて。恥ずかしさに気を取られるな……。ハルが言いたいことを考えろ。


私が言ったのは、確か、『信頼されたいなら自分のことを伝えること。信頼したいなら相手のことを知ること』だったな。


ハルに言ったことを思い出した瞬間、私の体に稲妻のような衝撃が走った。


そうか……そうか!そうだったんだな!?


ハルは、あいつらに信頼して欲しんだな!だから分けわかんない事つらつらと言ってたんだな!?


私の言ったことを素直に実行に移すハルがことさら可愛く見える。


だが、少し違う方向のような気がしないでもない。


そんなところもハルらしくて、笑ってはいけない場面なのに、堪え切れずに爆笑した。

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