真っ暗な世界で
『何か』が怖い。これ以上ここにいると私の『何か』がどうにかしそうで怖い。


ここを立ち去るべきだと私の本能が訴えた。私は、その本能に従う。


「夕餉……」


「え?」


「夕餉の支度……があるので、失礼します」


「え?あ、ちょっ……逃げんのかよ、春ー!!」


藤堂さんはそう叫んでいたけれど、今の私にはどうでも良かった。


「おうっ!引き止めてごめんなー」


今の私は、原田さんの無駄な洞察力に怯えていた。





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