真っ暗な世界で
「意地を張るなよ、平助」


「意地なんか張ってねぇし」


「それが、意地を張ってるって言うんだよ」


「いんや! 俺、意地張ってねぇよ!!」


「ねぇ、二人とも知ってる? そういうのを押し問答って言うんだよ」


原田さんと藤堂さんの押し問答を珍しく沖田さんが仲介した。


それで気を削がれたらしい二人は、小さくため息をついて口を噤む。


「ほら、春ちゃんはお膳持ってきなよ。ご飯冷めちゃうじゃない」


「はい」


どう動けばいいか分かりかねていた私に沖田さんが助け舟を出してくれたので、ありがたくその船に乗って広間から出た。


「春! 俺も行く!」


広間から出たら、永倉さんにそう言われ、あまりにも子犬のような雰囲気に断ることも出来ず、首を縦に振るしかなかった。


永倉さんの手伝いもあってか、多少は冷めてしまったが、なんとか温かいうちにお膳を運ぶことが出来た。


土方さんに声を掛け、山南さんの部屋へお茶を運びに行く。


「山南さん、お茶をお持ちしました」


「はい、どうぞ」


山南さんの許可を得て、山南さんの部屋に足を踏み入れる。


「春さんの淹れてくれたお茶は本当に久々です。やはり、美味ですね」


「ありがとうございます」


軽く会釈すれば、山南さんは少し困ったような声音で笑った。


「ははは……。少しゆるりとしてくださいませんか。少し堅苦しさを感じてしまいます。」


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