真っ暗な世界で
野次馬も消え、もらったお団子を食べながら私はまた街を歩いていた。


仕事……いい仕事ないかな??


声で探していると、何処からか視線を感じた。


強い、視線。


思わず足を止める。


すると、後ろから私に声が掛かった。


「……すまんが、坊や、少しいいかい?」


「…………俺のこと?」


少し上から声が聞こえたから、少し顔をあげてみる。


「……ちょっ、近藤さん!?」


この男は近藤というらしい。連れの男が焦ったように近藤という男を止めようとするが、全くの無駄だった。


「そうだ。君だよ」


「そうなの?どうかした?」


「さっきの騒動、見させてもらったよ。実に素晴らしかった!!」


「ふふっ、そんな褒められることしてないよ〜」


謙遜してみると、ギュッと両手をガッチリ掴まれた。


「…………っ!?」


何なの、この人……!!


「感心した!!どうだ!壬生浪士組に入らないかい!?」


男の突然の発言に、一瞬、固まった。


壬生浪士組……に?


壬生浪士組……確か、新選組の改名前の名前だったかな…。………ということは、後の新選組に入らないか、と言われているのか。


衣食住には困らないし、戦などにならない限り、ある程度の身の安全は保障される。


悪い話ではない。


「…いきなり、なにいってんだ、近藤さん!こんな餓鬼に務まるはずねぇだろ!」


「トシ!お前も見ただろう?見事なものだった!!」


「そりゃ、そうだけどよ!こんな餓鬼に人を斬れるはずねぇよ!!」


恐らく、近藤さんと呼ばれた、私に話し掛けてきた男は近藤勇。近藤勇にトシと呼ばれた男は土方歳三だろう。


二人とも、私の存在を無視して議論している。





< 19 / 195 >

この作品をシェア

pagetop