真っ暗な世界で
「私は中々頭の固い類の人間で、よく悪い方向に考えてしまうんですよ。私が悩んでいると必ず彼は笑顔で『あんまり考え過ぎんなよ、山南さん。もう少し気楽にいこうぜ。大丈夫!なんとかなるだろ!』と言うんです」
山南さんは楽しそうに言って、私は藤堂さんなら言いそうだと一人納得した。
「私は、何とお気楽な、とその場では思ってしまうんですが、後からふと思い出すと心がいつの間にか軽くなっているんです。彼には、そんな力があるんです」
そこまで言って、山南さんが一歩近づく気配がした。そして、山南さんはそのまま私の手をとって軽く握った。
彼の手は少し冷たくて、男性らしく少し無骨で、優しさに満ち溢れいていた。
「ですから、どうか、彼の優しさをただの甘さに変えないでください。いつかきっと、貴女も彼の優しさに救われる日が来ますから」
それはそれは仏のような慈悲があるように感じて、これが仏の山南の由来か、などと場違いなことを考える。
「おや、お茶がなくなってしまいました。夜も更けてきましたし、春さんもお休みしたらどうでしょう?」
「……そうします。山南さん、お休みなさいませ」
山南さんに退出を促された。これ以上長居しても迷惑以外の何ものでもないと考えた私は素直に山南さんから湯のみを受け取って部屋から出ようとしたすんでのところで呼び止められた。
「……あ、そうそう。土方くんに『回りくどいことはせず、直接来るように』と伝えてくださいね」
「……承知、しました」
一礼して、今度こそ部屋から出た。
バレていた。山南さんは、自分が土方さんに不審に思われていることを分かっている。
山南さんは楽しそうに言って、私は藤堂さんなら言いそうだと一人納得した。
「私は、何とお気楽な、とその場では思ってしまうんですが、後からふと思い出すと心がいつの間にか軽くなっているんです。彼には、そんな力があるんです」
そこまで言って、山南さんが一歩近づく気配がした。そして、山南さんはそのまま私の手をとって軽く握った。
彼の手は少し冷たくて、男性らしく少し無骨で、優しさに満ち溢れいていた。
「ですから、どうか、彼の優しさをただの甘さに変えないでください。いつかきっと、貴女も彼の優しさに救われる日が来ますから」
それはそれは仏のような慈悲があるように感じて、これが仏の山南の由来か、などと場違いなことを考える。
「おや、お茶がなくなってしまいました。夜も更けてきましたし、春さんもお休みしたらどうでしょう?」
「……そうします。山南さん、お休みなさいませ」
山南さんに退出を促された。これ以上長居しても迷惑以外の何ものでもないと考えた私は素直に山南さんから湯のみを受け取って部屋から出ようとしたすんでのところで呼び止められた。
「……あ、そうそう。土方くんに『回りくどいことはせず、直接来るように』と伝えてくださいね」
「……承知、しました」
一礼して、今度こそ部屋から出た。
バレていた。山南さんは、自分が土方さんに不審に思われていることを分かっている。