真っ暗な世界で
藤堂さんに図星をつかれた私はもうお手上げだった。
何も言い返せずに黙って俯く私に藤堂さんはさらに強く手を握った。
その手は、私の手を包み込むほど大きいらしい。そして、胸が苦しくなるほど熱い。
「なぁ。もう意地を張るのはやめようぜ、お互いに」
いつも騒がしい藤堂さんには似合わない、優しくて大人な口調。いつの間にそんな大人になったのか。
もう、いいだろうか。少し、吐露しても。
出口も見えない抵抗することに疲れてしまった私は、ぽつりとこぼれるように口にしてしまった。
ずっと言わないつもりだった本音を。
「……わた、しは。もう、失いたくないんです。目の前で大切な人が死ぬのは耐えられない。もう散々。だから、失わないためなら、なんだってします。殺されそうなら殺します。誰にも理解されなくていいから……」
「お前……」
「荒木田は、武士でした。土方さんの拷問に耐え、仲間を売らなかった。だからこそ、惨い拷問をした。私が去った後は皆さんの話を聞くに、惨状だったのでしょう。その惨状さが物語るのは、彼の強さです。私は卑怯な手でしか、彼に勝つことはできなかった」
はっと藤堂さんが息をのむ音が聞こえて、次に言おうとした言葉が思いつかずに、言葉に詰まってしまうが、口が勝手に言葉をこぼしていく。
「その夜、初めて自分が分からなくなりました。自分は何をしているのか。あの男と同じなんじゃないか。心底憎んでいたはずの、あの……!」
「あの、男?」
「……名を口にするのもおぞましい男です。私の全てを奪い、狂わせた。憎んでも憎み切れない……」
「お前がそんな目をするほどに……?」
藤堂さんの困惑するような声音に、私は首を傾げた。
「そんな、目?」
「総司が近藤さんを馬鹿にされたときにする目の何倍も憎しみがこもっている目。見つめられたら殺されそうなくらい」
「出来ることなら、殺してやりたい。あいつが彼女たちに、私にしたように」
「そいつは、春に何を?」
小刻みに憎しみに震える私に、藤堂さんは戸惑いながら問いかけるが、私にはそれ以上話すことはできなかった。私は力なく首を横に振り、勘弁してくれと訴えた。
「それ以上は、話したくない、です」
「……そっか。分かった。ありがと」
案外あっさりと引き下がった藤堂さんに驚きながら、私は口を閉ざした。
あー……話し過ぎた。少しのつもりが、こんなにも話すことになるとは。謹慎からの私はどうもおかしい。
藤堂さんの体温が私の手から離れていくのを感じながら、そんな後悔をしていた。
でも、心のどこかが軽くなっているのを確かに感じた。
何も言い返せずに黙って俯く私に藤堂さんはさらに強く手を握った。
その手は、私の手を包み込むほど大きいらしい。そして、胸が苦しくなるほど熱い。
「なぁ。もう意地を張るのはやめようぜ、お互いに」
いつも騒がしい藤堂さんには似合わない、優しくて大人な口調。いつの間にそんな大人になったのか。
もう、いいだろうか。少し、吐露しても。
出口も見えない抵抗することに疲れてしまった私は、ぽつりとこぼれるように口にしてしまった。
ずっと言わないつもりだった本音を。
「……わた、しは。もう、失いたくないんです。目の前で大切な人が死ぬのは耐えられない。もう散々。だから、失わないためなら、なんだってします。殺されそうなら殺します。誰にも理解されなくていいから……」
「お前……」
「荒木田は、武士でした。土方さんの拷問に耐え、仲間を売らなかった。だからこそ、惨い拷問をした。私が去った後は皆さんの話を聞くに、惨状だったのでしょう。その惨状さが物語るのは、彼の強さです。私は卑怯な手でしか、彼に勝つことはできなかった」
はっと藤堂さんが息をのむ音が聞こえて、次に言おうとした言葉が思いつかずに、言葉に詰まってしまうが、口が勝手に言葉をこぼしていく。
「その夜、初めて自分が分からなくなりました。自分は何をしているのか。あの男と同じなんじゃないか。心底憎んでいたはずの、あの……!」
「あの、男?」
「……名を口にするのもおぞましい男です。私の全てを奪い、狂わせた。憎んでも憎み切れない……」
「お前がそんな目をするほどに……?」
藤堂さんの困惑するような声音に、私は首を傾げた。
「そんな、目?」
「総司が近藤さんを馬鹿にされたときにする目の何倍も憎しみがこもっている目。見つめられたら殺されそうなくらい」
「出来ることなら、殺してやりたい。あいつが彼女たちに、私にしたように」
「そいつは、春に何を?」
小刻みに憎しみに震える私に、藤堂さんは戸惑いながら問いかけるが、私にはそれ以上話すことはできなかった。私は力なく首を横に振り、勘弁してくれと訴えた。
「それ以上は、話したくない、です」
「……そっか。分かった。ありがと」
案外あっさりと引き下がった藤堂さんに驚きながら、私は口を閉ざした。
あー……話し過ぎた。少しのつもりが、こんなにも話すことになるとは。謹慎からの私はどうもおかしい。
藤堂さんの体温が私の手から離れていくのを感じながら、そんな後悔をしていた。
でも、心のどこかが軽くなっているのを確かに感じた。