真っ暗な世界で
第２章

入隊試験

きっと、土方さんは私を疑っている。いや、疑っていない訳がない。


拷問にかけられるのは流石に嫌だし、なんとかスパイじゃないと信じてもらわないと。


はぁ……時間、かかるなぁ。


小さく溜め息をついて、少しだけ肩を落とした。


「…どうかしたのか、春」


土方さんがその些細な変化に気付き、私に言った。


「……いーえ、なにも」


「……そうだ。お前、親はいないのか？」


「……えっ」


思いもよらない土方さんの言葉につい、言葉に詰まる。


「餓鬼を入れるとなりゃぁ、親に許可をもらわねぇとダメだろ」


「お父さんとお母さんは、いないです」


口に出すと、急に現実味を帯び始める、この言葉。


あ、そっか。私…………ほんとに独りなんだ。


「そうか。……悪かったな」


少し気まずそうに土方さんがいうと同時に近藤さんが声高らかにいう。


「ついたぞ！！ここが壬生浪士組の屯所だ！！」


そうとう壬生浪士組を誇らしく思っているらしい。


少し、微笑ましかった。








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