真っ暗な世界で
新撰組…..いや、壬生浪士組の幹部と二人きりなんてそうそう訪れる機会はない。


間者……未来でいう、スパイ。


その類いの人間はこの機を逃すまいと襲いかかってくるだろう。土方さんは自分が盾となり、それを確かめようとしているのだ、きっと。


勿論、何もする気はないので、第一関門は突破となるのかな?


ピリピリと一人だけ緊迫した土方さんが気付いていないようだけど、私にガンガン殺気を送ってる。


「……土方さん?何の用ですか。僕、暇じゃない……」


「…総司。来てすぐには何だが、こいつと勝負してくれ」


総司。土方さんがそう呼んだ青年。おそらく沖田総司。


声は低めで、でもどこか軽くて、人を小バカにしているような感じ。


ほんとにヒラメ顔なのかな??


なんて失礼極まりない興味が湧いてきたけど、生憎、それを確かめる術は私にはない。


「こいつって……土方さん。まだこの子こどもじゃない」


「さっき、近藤さんが道端でこいつに声を掛けたんだよ。ここに入らねぇかって」


「……あぁ、なるほど」


呆れたように息を吐き出す土方とその一言で状況を把握した沖田総司。


……歴史上の英雄たちが、私の目の前で喋っている……。


よし、これ、自慢できるぞ。


そんな風に思った私は、いろいろありすぎて頭がイカれてたんだろう。













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