真っ暗な世界で
「……何からしら、あの車」


「……危なっかしいな。よけよう」


「……えぇ、そうしたほうが……っ!?」


母が息を飲んだのが分かった。


何か良くないことが起きる。そう直感が訴えた。


とっさにうずくまり、自分のことをきつく抱きしめた瞬間。


「なに考えてんだ、こっちに来るなんて!スリップするような天気じゃないだろ!?」


「あ、あなた!!」


「……っ!!クソッ!避けられない!」


ブッブー!!!


クラクションが鳴り、大きな衝撃が来たあと、宙に浮いたような感覚を覚えた。


きっと、真っ正面からぶつかったんだ。


前のほうから肉が潰れる音がしたし、お母さんと父さんはもう………。


だんだんと意識が遠のいていく。


あぁ、世の中は残酷で。


私から光を奪い、色を奪い、そして、家族までもを奪ってゆく。


この世界が、


「憎い……」


そう、呟いたと同時に私の意識はプツリと切れた。



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