真っ暗な世界で
「土方さん、榛です」


「おう、入れ」


土方さんの許可を得てから部屋に入る。


「お茶をもってきました」


「あぁ……ありがとよ」


入り口付近でお盆を置いた。


「いえ…」


土方さんはおぼんからまだ熱い湯のみをコトンと取り、ズズッと口に運んだ。


熱いのに……。舌を火傷しないのだろうか?


そんな心配をしつつ、お盆を拾って、部屋の中にはいろうとした。


……が、


「……うわ」


足に何かが当たり、転んでしまった。


「あっ……わりぃ!」


「………いえ」


土方さんは急いでそこに置いてあったものを片付ける。


私が自由に、自然に屯所を歩くことが出来るのは、決められた物が常に決められた場所にあるから。


つまり、いつも何もない所に何かがあると、私は気付く事が出来ずに転んでしまう。


あの硬さなら、木箱のような物に躓いたんだろう。


「大丈夫か!?」


「大丈夫ですよ。不注意でした。申し訳ございません」


「いや、俺こそ悪かった」


申し訳なさそうに謝る土方さん。


何も、貴方がそこまで負い目を感じることはないのに。


私は気にしないでくれ、と心の中で苦笑いした。


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