真っ暗な世界で
門に近付くにつれ、嗅ぎなれない香りがにわかにしてきた。


それは、現代の香水のような香りがする。


………香水??なんで、こんなところで……??


ここで嗅ぐことの出来ないはずの香りがすることで首を傾げていると、今度は女のヒステリックな声が聞こえてきた。


今、相手は激情しているみたい。


「だぁーかぁーらぁ!!外人じゃねぇって!!この髪は染めてんの!そんなことも分かんねぇの!?」


少々……いや、かなり言葉遣いの荒い少女のよう。


荒い言葉遣い、髪を染める、それは現代にいる人間しか使わない言葉。


彼女はきっと、現代人だ。


なんかの拍子にこちらに飛ばされてきたのだろう。私のように。


だけど、なんで………。いや、深く考えるのはやめておこう。私が考えたところで答えが出るような簡単なものではないから。


「………土方さん、どうされましたか…?」


私は門の近くの部屋に入り、門にいる人間には見えないらしい位置で土方さんに話し掛けた。


「誰!!」


「うるさいな、君。黙ってよ」


「………あぁ、幹部を広間に召集しろ」


「御意」


私は静かに立ち上がり、その場を去った。


まず、いつも空いている角の部屋に布団を敷いた。


きっと、沖田さんはあのうるささに耐えかねて、気絶させちゃうから。


布団を敷き終わると、超特急で幹部を呼びに行った。


幹部が全員広間にいることを話し声で確認してから私が員分のお茶を煎れ、広間へと向かった。


途中、確か布団を敷いた部屋からあの甘い香りがした。音もなく、香りも動いていないから、案の定気絶しているんだろう。


「榛です。お茶を持ってきました」


「おぉ、入れ」


近藤さんの許可をもらい、部屋に入って、幹部全員にお茶を配った。










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