真っ暗な世界で
今日の収穫はかなり良かった。今日の情報以上のものはきっと出てこないだろう。
馬鹿共が文字通り馬鹿騒ぎしている間に藩士Aに耳元で小さく
「なら、最近ここを集会所にしとったのも旦那様方?あたし、それを聞いて早う長州はんのお相手したかったのよ」
と呟いて、頬を擦り寄らすと、声と雰囲気で分かるくらいデレデレしながら頷いた。
気持ちが悪い。人を不快にさせる天才。
そんなことを思いながら部屋に戻ると菊田さんの雰囲気があった。
「………菊田さん??」
「お疲れさん、もう、終わったのか?」
「えぇ。必要なことは聞き終えましたから、早めにお眠りになっていただきました」
「ははっ……。やるな、お前も」
褒めるような口調で言っていたものの、何処か浮かない雰囲気を感じる。
「どうかしましたか?」
「なんでもねぇ。ほら、髪、重いだろ。取るぞ」
「はい」
いつものように話しているものの、それがわざとかなんてすぐわかる。彼は無理をしている。
「菊田さん、どうしたんですか」
これは、疑問形ではなく、確信。ないとは言わせない。
「なんでもねぇって。ほら、終わったぞ」
少し苛立ちを含んだ声で私を制そうとする。そんなことで怯む私じゃない。
私は頭の上にある手を掴み、菊田さんの方を向く。
「これは、聞いてるんじゃありません。何かあったんだと確信をしているんです。正直に仰ってください」
彼は膝立ちしているから、顔の位置は分からない。だから、目の前の手の方を見て言った。
「─────んだよ」
「え?」
彼がボソリと何か言った。不意のことで聞く事が出来なかったけど、すぐにそんなことを考える事は出来なくなった。
ギュッとした締め付け感、包まれた体温、限りなく近くに香る菊田さんの香り。
……私、抱き締められてる?
それに気付くまで3秒。
我に返ったとたん、菊田さんが私をきつく抱き締めながら、絞り出すように言った。
「──……っだからだよ!お前が、もうすぐここから居なくなってしまうから……!あの人斬りと呼ばれる奴等のところにあんたを返したくないんだよ。お前を好いてるから!!!」
「き…く……たさん……」
お前を好いてるから
オマエヲスイテイルカラ
好いている?好いて……好き?
菊田さんが、私のことを好き?
…………………………………?
あまりに突然のことで………というより、人生初の告白をされて、少しパニックになっている。
私が異性に好意をよせられるなんて、考えもしていなかった。全くもって、この世は複雑怪奇だ。
「菊田さん、俺、男……」
「女」
「?」
「俺にとって、お前は女」
必死に背中に回った腕から逃れようとしてみるけど、全くダメ。
仕方なく、暫く菊田さんに抱き締められていた。
馬鹿共が文字通り馬鹿騒ぎしている間に藩士Aに耳元で小さく
「なら、最近ここを集会所にしとったのも旦那様方?あたし、それを聞いて早う長州はんのお相手したかったのよ」
と呟いて、頬を擦り寄らすと、声と雰囲気で分かるくらいデレデレしながら頷いた。
気持ちが悪い。人を不快にさせる天才。
そんなことを思いながら部屋に戻ると菊田さんの雰囲気があった。
「………菊田さん??」
「お疲れさん、もう、終わったのか?」
「えぇ。必要なことは聞き終えましたから、早めにお眠りになっていただきました」
「ははっ……。やるな、お前も」
褒めるような口調で言っていたものの、何処か浮かない雰囲気を感じる。
「どうかしましたか?」
「なんでもねぇ。ほら、髪、重いだろ。取るぞ」
「はい」
いつものように話しているものの、それがわざとかなんてすぐわかる。彼は無理をしている。
「菊田さん、どうしたんですか」
これは、疑問形ではなく、確信。ないとは言わせない。
「なんでもねぇって。ほら、終わったぞ」
少し苛立ちを含んだ声で私を制そうとする。そんなことで怯む私じゃない。
私は頭の上にある手を掴み、菊田さんの方を向く。
「これは、聞いてるんじゃありません。何かあったんだと確信をしているんです。正直に仰ってください」
彼は膝立ちしているから、顔の位置は分からない。だから、目の前の手の方を見て言った。
「─────んだよ」
「え?」
彼がボソリと何か言った。不意のことで聞く事が出来なかったけど、すぐにそんなことを考える事は出来なくなった。
ギュッとした締め付け感、包まれた体温、限りなく近くに香る菊田さんの香り。
……私、抱き締められてる?
それに気付くまで3秒。
我に返ったとたん、菊田さんが私をきつく抱き締めながら、絞り出すように言った。
「──……っだからだよ!お前が、もうすぐここから居なくなってしまうから……!あの人斬りと呼ばれる奴等のところにあんたを返したくないんだよ。お前を好いてるから!!!」
「き…く……たさん……」
お前を好いてるから
オマエヲスイテイルカラ
好いている?好いて……好き?
菊田さんが、私のことを好き?
…………………………………?
あまりに突然のことで………というより、人生初の告白をされて、少しパニックになっている。
私が異性に好意をよせられるなんて、考えもしていなかった。全くもって、この世は複雑怪奇だ。
「菊田さん、俺、男……」
「女」
「?」
「俺にとって、お前は女」
必死に背中に回った腕から逃れようとしてみるけど、全くダメ。
仕方なく、暫く菊田さんに抱き締められていた。