真っ暗な世界で
まだ夜も明けていない頃、私の朝が始まる。


感覚で、だけど多分4時くらい。


起き上がり、布団をたたみ、この時間にお風呂に入る。


私の1日の身支度を終わらせたら、私のつかの間の休息。


今は冬なので、朝が来るのが遅い。隊士が起き上がるのは朝日が眩しく照らし始める頃。それは大体6時半。


朝餉の時間は7時。逆算して、5時に朝食作りをする。


そして、今は4時半。あと30分ある。


……と言っても実際の休憩時間は約5分。


5分休んだら、道場に向かい、一人素振りをする。毎日300回ほど。


その間に起きて、道場にくるのが………


「春、帰って来ていたのか」


斎藤さんだ。


「はい。昨夜に」


「やるか」


「お願いいたします」


私は礼をして、構える。


木刀がカタリと、構えられる音がした。斎藤さんが構えた音だ。


これは早起きの私達しか知らない手合わせ。もう、習慣となってる。


「……行くぞ」


そして、斎藤さんの低い声がその試合のコングとなり、静かに試合が始まるのだ。




























「……っ、はぁ。参りました」


結果はいつもの如く私の負け。


だけど、斎藤さんとの手合わせは楽しい。


「春。また腕を上げていないか?」


「そうですか。ありがとうござます」


「まったく……本当に目が見えてないとは思えん」


「それは最高の褒め言葉ですね」


斎藤さんは私が盲目であることを知っている。沖田さんと同じように試合をして、分かったらしい。


平隊士と永倉さん、原田さん、藤堂さんたちを欺くことは出来ても、観察眼のある斎藤さんや沖田さんは欺くことが出来ない。


まだまだ私も未熟な証拠。


「では、朝餉を作らなければならないので失礼します」


「あぁ」


斎藤さんに一礼して、道場を出た。



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