真っ暗な世界で
私的には、そこまで料理は下手じゃないと思う。


そりゃ、見た目に難ありかもしれないけど、私は食べれるし。あくまで私のみ!だけどね。


まぁ、引き受けた以上、作らなければならないので、つべこべ考えるのは止めた。


台所に行き、ある食材を確認する。


ここにあるものだけでも間に合いそうだ。


「これにこうしてっと」


料理はスピードが命!ってことで私の感覚だけで調理していく。


秋刀魚を煮る。隠し味を入れる。美味しそう。


ご飯を炊く。隠し味を入れる。美味しそう。


かぼちゃがあったから蒸かしてみる。隠し味を入れる。美味しそう。


味噌汁を作る。味噌と一緒に隠し味を入れる。美味しそう。


夕方になるころには全てを終えていた。


うん、我ながらいい出来だ。


久しぶりの上機嫌で夕餉を運んだ。


夕餉の時間になると、皆が集まり、自分の定位置に着くや否や私が作った料理たちを有り得ないものを見るような目で凝視した。


「………………なんだよ。文句あんの?」


「………俺は、要らねぇ」


土方が何処か哀れんだような顔をして、近藤さんの制止も聞かずにその場を去って行った。


「……ははっ。り、料理は、み、見た目じゃねーもんなぁー。ハハハ」


平助が全身に異常なくらいの汗を掻きながらパクリと一口食べた。


沖田や、斎藤、源さん、山南さんは勿論いつもはご飯争奪戦をする原田や永倉までもが平助の末路を固唾をのんで見守る。


静止して10秒。


顔は生きているとは思えないほど青ざめ、ガタガタと震え出した。


そして


──────パタッ。


その体制を維持したまま、床に倒れた。


「平助ぇぇぇぇえ!!!」


「平助ぇぇぇぇえ!!!」


「わぉ。平助、大丈夫?」


「平助、しっかりしろ!」


「だ、大丈夫かい!?平助くん!」


「……これは……」


永倉と原田は、同時に平助の名前を叫ぶ。沖田は、冗談で驚いている素振りを見せ、その場を動かない。斎藤はいち早く平助を介抱する。源さんも斎藤に続く。山南さんは見た事のない惨劇に静かに驚いていた。





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