真っ暗な世界で
あれ以降、私は台所に立ち入り禁止になった。ったく、あいつらが私に頼んだくせに。


昼食が終わったあと、あのゲス方に呼ばれた。


暇な時はちょっかいかけにゲス方の部屋に行くけど、いざ呼ばれたとなれば行く気が起きない。つまり、行きたくない。


「なんだ、土方」


せめてもの嫌がらせにわざと襖をスッパァァン!と豪快にあける。


「…………。もう少し静かに襖開けろ。直すのは春だぞ」


私がハル君を気に入ってるのをいいことにそれをだしにしやがるゲス方。さん付けのことは諦めたようだ。


「…………チッ」


それを分かってて、従ってしまう私も馬鹿。


「平助が倒れたそうだな。何を入れた?」


土方がぶっきらぼうに私に聞く。


そんなこと知るわけないだろ。


「あ?普通に料理してたよ」


「んな訳あるか。変わったもの入れたろ」


「隠し味程度に、生姜と梅干しと納豆とワサビとくさやのみじん切りを混ぜたものを入れたぐらいだよ」


「それが原因だ、馬鹿野郎」


土方は目に止まらぬ速さで手に持っていた書物で私の頭を思いっきり殴った。


ただの紙が集まったものといえども破壊力は十分すぎるほどあって。


「いってぇ!!体に良いものだろ!」


その場で痛みに悶えた。


「個々が体によくても、そいつらを混ぜて入れたらそれは殺戮兵器だ!」


若干涙目でその書物をみてみると、そこには『豊玉発句集』とかいてあった。


ほう、ぎょくはっくしゅう…?


どこかで聞いたことのある名前だったが、思い出すことが出来ないので、あまり気にしないことにした。


「お前の処遇だがな。女中としていてもらう」


半ば投げやりに言われた私の新選組での役割。それが、女中…………??


「あ、飯は作るな」


「誰が作るか!」


思わず土方の頭をハリセンで殴る。


え?どこからハリセンが出て来たんだって?


そーゆーのを無視すんのがファンタジーなんだよっ!!


「いってぇ!そんなのどこから出てきた!?」


「そーゆーのを無視すんのがファンタジーなんだよっ!」


「ふぁんたじーって何だよっ!」


「空想ってことだ、ボケェ!」


「俺が生きてるのは現実だ、ゴラ」


………っと、話が逸れてしまったが、私がやりたいのは家事とかそんな家庭的なことじゃない。


もっと直接的に新選組に貢献したいんだ。


つまり


「隊士にしろ!!」


「駄目に決まってんだろ、馬鹿か」


隊士になりたいのだ。


ゲス方には速攻却下されたがな!!


私は諦めない!!

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