真っ暗な世界で
なんだ、今のは反則だろっ!


不覚にもキュンとしたじゃないかっ!!


沖田が去った後、高鳴る心臓を押さえた。


あーもう、新選組の奴等は可愛い奴が多過ぎる!


沖田でこうなら、ハル君に微笑まれたらダメだ。死ねる。可愛い。マスコットキャラクターだ。売り出せる。


私の思考回路がついに商品化まで進んだので、強制終了させる。


ふー……危ない。思考回路が銭ゲバみたいになるところだった。


「邪魔だ」


内心ほっと胸をなでおろしていると、唐突に後ろから声がした。


「……斎藤?」


「それがどうした。邪魔だ」


振り返ると、そこにいたのは三番隊組長斎藤一だった。


切れ長の冷たい目。薄い唇に日焼けを知らないような白い肌。くせっ毛なのか、高い位置にまとめた真っ黒の髪はところどころカールしている。


この男、必要最低限しか話さない。


だからなのか、いまだにこいつが読めない。


今、斎藤がいうには、私が通り道のど真ん中にいるから邪魔なんだと。知るかよ。


「……ほらよ」


「………………」


仕方なく、端によけてやったのに、斎藤は私を冷たい目で一瞥して礼の一言も言わずに通り過ぎていった。


ムキィーッ!なんなんだよ、あいつ!!


そんな斎藤にも、優しい玲那ちゃん。隊士になったことを報告しました。


「あっ、斎藤!私、今日から一番隊所属の隊士になったからー!」


少し大きめの声で言うと、斎藤は歩みを止めた。そして、振り返ることなくただ、一言だけ言った。


「ならば、敬語を使え」


それだけ言うと、斎藤はすたすたと自分の部屋へと消えた。


…………だぁーれが使うかってんだよ!べぇーだ!!

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