真っ暗な世界で
少しの間があった後、ハッと我に返った。


私は、なにを泣いてるんだ。泣いて何かが変わるのか。


悔しい。だから泣いた。


それがどうした。どんなに願おうと私はもといた時代に戻る術を知らない。いつ、戻ることが出来るかなんて、知る訳が無い。


私は、今日新選組の隊士になった。


つまり、私は、新選組隊士としてこの時代を生きるんだ。この時代に生きるんだ。


確かに現代には私の愛おしいものがたくさんある。私が積み上げてきたものもある。だけど……


いつまでも現代に縋り付いてるんじゃねぇよ。


私はまだ瞼と頬に残っている涙をガシガシと拭い、立ち上がった。


そして、満天の星空を睨み付けるように両手を両頬にやって


───パシンッ


思い切りひっぱたいた。


頬がヒリヒリする。手もヒリヒリする。だけど今の私には関係なかった。


「……でも、ここで生きていかなきゃならねぇんだ」


心で思ったことをもう一度、口に出す。


自分自身に再度言い聞かせるように。


そうすると、心がすっと少しだけ軽くなった気がした。


それと同時にわたしの心に雪崩込んできたのは、歴史への反抗心。


私が知っている新選組の歴史は、幸せだったとはいえないものだ。


「新選組は、私が守るんだ。私が知っている歴史を変えるんだ。幸せにしてみせる!!」


そうだ、私が新選組を守る。いままでの歴史なんか知るもんか。運命なんて自分で手繰り寄せてやる。恨むなら神様を恨めよ。


私を嘲笑うことしか知らない満天の星空に宣戦布告だ。


あんたの思い通りなんかにもう二度と、させねぇからな。


満天の星空がその宣戦布告を満足そうに受けた気がした。


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