真っ暗な世界で
引きずられて、ぶち込まれたのは私の部屋。


「いってぇ……」


「見たろ」


「は?」


土方は私に殴りかかることもなく、ただ真っ直ぐに私を見てる。


「春、見たろ」


「見たよ」


アレで見てないとか、目がおかしいやつだろ。


「ちげぇよ、馬鹿」


「はぁぁあっ!?」


土方、意味分からん!!


心の中で土方の言葉に首を傾げていると、土方は私に気の毒そうな目を向けてきた。


なんだ、コイツ。


「今のが、『本当』の春だ」


「…えっ、機嫌が悪いとかじゃねぇの?」


「ちげぇよ、あれが普段の春だ。分かったろ。お前は勘違いしてる。春はそんな無邪気な奴じゃねぇよ」


土方はそれだけ言うとそのまま部屋を出て行った。


あれが『本当』のハル君だとしたら、あの日見た無邪気なハル君は『偽物』のハル君?


あー頭こんがらがって来た。


土方が言いたいことはなんとなく分かった。


とりあえず、朝ごはんのときに観察してみよう。


そう考えた私は広間へと向かった。

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