真っ暗な世界で
「ハル。笑って」


この人はなんという無茶をいうのだろうか。


「…………」


こういうものは無視するのが一番だ。


「笑って〜」


「………断ります」


あのやりとりが約5分続いた。


嫌気が差した私はきっぱりと断った。


「なんで?」


咲洲は意味がわからないというふうに私に聞く。


なんで?


決まってるじゃない。心も許していない相手に、面白くもないのに誰が笑うの?


もし、笑う者がいるなら、それは完全な作り笑顔だ。


「笑う必要がないからです」


「私が、必要としてる」


「それは…命令でしょうか?」


「…………は?…………う、うん」


咲洲は戸惑いながら取り敢えずというように肯定した。


「残念ながら、俺は土方さんの小姓です。幹部でもない貴女に俺は命令される筋合いはありません」


私はそれを言い終わると、咲洲に何か言われる前に部屋から出た。


全く分からない。どうして彼女はこんな私と関わりたがるのか。そもそもなんで人と関わりたがる?


きっと、その答えは私の思想がガラリと180度変わらないと分からない。


ならば、考えても無駄だ。


私は、今夜のことに集中しよう。


新選組の役に立つのはいいが、途中で死んでしまっては本末転倒もいいところなんだから。










< 97 / 195 >

この作品をシェア

pagetop